加熱すれば食中毒菌が死滅するとは限らない | 料理初心者 | 初めての料理

加熱すれば食中毒菌が死滅するとは限らない

近年、食中毒の対策として「よく加熱すること」が注目されていますが、耐熱性のある細菌がいることをご存知でしょうか。

これらの細菌は加熱調理後の温度低下とともに増殖が始まり、大量に増殖した結果、食中毒の原因になるとされています。

これらの細菌に対する予防と対策についてまとめていきたいと思います。

 

ウェルシュ菌

耐熱性のある細菌の1つとして、ウェルシュ菌があります。

ウェルシュ菌は、土壌の常在細菌であり、健康者の腸管内にも常在する細菌ですが、これらとは異なり特殊な性状を獲得したウェルシュ菌が食中毒を引き起こすとされています。

ウェルシュ菌による食中毒被害は以下のようになっており、毎年同じくらいの発生件数で推移しています。

2011年に24件(2784人)

2012年に26件(1597人)

2013年に19件(854人)

2014年に25件(2373人)

 

この細菌は、酸素のないところで増殖する菌で芽胞(がほう)という耐久性の高い細胞構造を作り、100℃ 4時間でも死滅しないということです。

ただし、食品中で増殖したウェルシュ菌は芽胞型ではなく増殖型で生存しているとされていて、増殖型は熱に弱いことから、この増殖型のウェルシュ菌に対しては加熱が有効とされています。

 

食中毒の事例

食中毒になった時の症状として、潜伏期間6~18時間(平均10時間)で主症状は下痢と腹痛、稀に嘔吐や発熱を引き起こします。

過去の食中毒原因食品としては、スープやカレーなどの煮込み料理となっていて、加熱することによって酸素が大気中に放出され、増殖の可能性が増していると考えられています。

100℃で加熱しても死なないウェルシュ菌は、発育温度帯にはいると増殖を始め食中毒のリスクが増加します。

例えば、大量に作ったカレーなどの煮込み料理の火を止めて、数時間粗熱をとるために放置した場合、発育温度帯50℃に突入することで、ウェルシュ菌が増殖を始め、45℃では最も増殖速度が速いとされています。

 

予防と対策

このため、煮込み料理を行った場合は、調理後、速やかに食べることが推奨されています。

調理後は、細菌の発育温度帯を避けるために10℃以下か55℃以上を保つ必要があるとされています。

よって、保存前に粗熱をとっている時など上記温度帯を保てていない場合は注意が必要です。

食品を再加熱する場合は、混ぜながら充分に加熱しなければなりませんが、上述したとおり、加熱で死滅しなない可能性のある芽胞もあるため、加熱を過信しないこととされています。

 

参考URL:

厚生労働省:食中毒発生件数

加熱でも死なない食中毒菌 2.ウエルシュ菌

ウェルシュ菌による食中毒について

 

  • 関連記事

    にんにく卵黄

    にんにく卵黄とは?期待される効果・効能

    にんにく卵黄は高血圧などによって引き起こされる脳卒中や心筋梗塞など予防対策に効果があるとされています。また、薬ではないため病院などで出される降圧剤よりも安全だということが確認されています。 これらは、有賀豊彦先生らの研究… もっと読む »

    食物繊維摂取の必要性

    近年、食生活の欧米化やライフスタイルの変化に伴い、食物繊維の摂取量が年々低下していることが報告されています。 食物繊維が不足することで、便秘に成りがちになり、さらには大腸がんのリスクを上げる可能性があります。 ●2013… もっと読む »

    たまごは1日1個まで説の真偽

    昔からたまごは1日に1個までと言い聞かされて来なかったでしょうか。 これは、たまごに含有している成分を過剰に摂取してはいけないなど、何かしらの理由があるということでしょうか。 また、現代においても、1日1個説は変わらない… もっと読む »

    焦げた食べ物で癌になる!?

    焦げた部分は体によくないから食べないようにと言い聞かされてこなかったでしょうか。 焦げた部分は発癌性物質が含まれているという理由から、このように焦げ目を避けることは皆さんの中でも常識となっていたと思います。 しかし、20… もっと読む »

    生肉は牛よりも豚のほうが危険!

    厚生労働省は2012年7月から牛を生食用として販売・提供することを禁止しましたが、その後、代わりに豚の生食を販売・提供する店が増えたため、このたび2015年6月中旬頃を目処に豚も同様に禁止されることが決まりました。 牛や… もっと読む »

    アボガドの切り方

    ここでは初めてアボガドを料理する方を対象に、アボガドの切り方を説明したいと思います。 アボガドの切り方 アボガドに包丁を入れます。 すると、中心部にある大きな種に刃が引っかかりますのでそのまま種の周りを1周するように切り… もっと読む »

    牛乳

    牛乳の膜の正体は?膜を張らないようにする方法

    牛乳を温めると表面に膜ができますよね。この膜、なんだか気持ちわるいなーと取り除いているのは私だけではないはずです。 見た目はアレですが、実は膜の正体は脂質やタンパク質であり、害のあるものではありません。   牛… もっと読む »

    上手な味見の仕方

    料理を始めて間もない頃、味見することを忘れていたり、あるいは大丈夫だろうと安易に考え、味見をせずにそのまま食卓へ料理を並べたりはしてはいなかったでしょうか。 料理を作る過程において、味見をすることはとても大切です。 まっ… もっと読む »

    買ってきた卵の正しい保存方法。

    先日、妻にダメ!と注意されたのが卵の保存方法でした。家庭用冷蔵庫にはプラスチック製の卵ケースが標準で付いていると思います。もちろん、我が家にもこれが付いているのですが、そこに卵を置くときに注意しなければならないというので… もっと読む »

    里芋の皮の剥き方

    里芋の皮は茹でることによって簡単に剥くことができるようになりますが、剥き難い皮もあります。 剥き難い部分については、あまり固執せず、あとで包丁で切り落とすようにします。   里芋の皮の剥き方 まずは里芋の泥をさ… もっと読む »